近藤れん子によるパリ式立体裁断・大型洋裁専門書。人体構造・婦人体型・パターン構成・ドレープ・トワル操作・スローパー・コルサージュ・衿・スカート・パンタロン・袖・ドレス・タイユール・コート・直線裁断までを多数の詳細図解と写真で体系的に解説。東京立体裁断研究所長として活動した著者が、パリ留学とクチュール経験を背景にまとめた研究書で、フランス・オートクチュールと日本洋裁教育双方の経験を土台に執筆。
単なる製図技法だけでなく、「人体と衣服」「人体関節機能と婦人服」「婦人体型とパターン」「人体と人台の対比」「立体裁断と人台」「トワルの整理」「ピン打ちの要点」「ダーツのとり方」「視覚養成のためのエチュード」など、立体裁断の根本原理を重視。さらにコルサージュ、衿構造、スカート構造、パンタロン構造、袖構造、テーラード・スーツ、コートまでを一冊に収録した本格的内容。
著者はあとがきで、パリでトワルへ直接鋏を入れる立体裁断テクニックに触れた際、「服作り20年の歴史の中で、はじめてその原点にふれたような感激と興奮を味わった」と述べています。また「悪いパターンでは決してよい婦人服は作れません」「縫えないデザイナーでは完全なデザインはできず、縫えないパタンナーも良質のパターンを作製することはできません」と記し、人体・構造・縫製・立体感覚を統合した服作りの重要性を強調しています。バレンシアガを例に取り上げて、パリのオートクチュールメゾンの組織や、パリのデザイナー、クチュリエたちについての解説も必読。
「日本の洋裁教育とその背景」「プレタ・ポルテ」「クチュール」「パリ式立体裁断」「トワル」「ムラージュ」「スローパー」「タイユール」「テーラード・スーツ」など、昭和後期日本の洋裁教育・立体裁断研究、洋裁、服飾デザイン、パターンメーキング、立体裁断、ドレーピング、クチュール研究、ファッション史資料。
洋裁専門書 近藤れん子の立体裁断と基礎知識 パリ式立体裁研究所 写真解説 詳細図解 基礎知識
近藤れん子 著 東京立体裁断研究所長
モードェモード社 発行
1991年4版 1979年初版
約30.5x23x3.1cm
478ページ
ハードカバー
モノクロ
※画像のものがすべてです
【あとがき】より一部紹介
本書は、パリ式の立体裁断をベースとした研究書です。
一着の婦人服を作る場合でも、その求め方や、プロセスには、いろいろなシステムがあります。そしてその多様なシステムの中から、その理論性に共鳴し、納得した時、人びとはそれを選択し、そのシステムを採用していきます。
パリの学校で、はじめてトワルに直接鋏を入れながら裁断をするテクニックを習った時、私は自分の服作り20年の歴史の中で、はじめてその原点にふれたような感激と興奮を味わったことは、今でも鮮やかな印象で残っています。
女性の体を型どった人台に無理なく布地を合わせながら造形すると婦人服ができる。この単純で原始的な発想で生まれたかに見えるシステムの中にも、確実で合理的なテクニックと理論性のあることを認識したのもこの時でした。
女体のシルウェットに合わせながら、布地の風合いを検討し、マチエールの特性も観察できるこの裁断システムは、原則として布地を対象とし、様々な素材と多彩なデザインとのバランスによって造形しなければならない婦人服作りには最適なシステムであり、これを作り出した職人達の手わざは、服作りの長い歴史と伝統を持つパリがその背景になっていることは申すまでもありません。
伊東茂平先生に師事し、服作りの基本的なテクニックと理論を叩き込まれた私は、昭和25年にその作図システムによる構成原理を徹底的にマスターしたい一念で、郷里で《三条カッティング・スクール》を開設し教えることによって自ら学び取ることを願いました。夢中のうちに一年間がすぎる頃から、私は心の隅で何かしら違和感にも似た心の迷いを覚えるようになり、それが日増しに大きく固まっていくのをおさえることができませんでした。3年後に私は、その小さな洋裁学校を閉鎖し再び上京しました。
それは、洋裁学校教育で製図方式や生徒達の縫製指導だけではとうてい満足感を味わうことは不可能であることに気づいたからです。服作りの造形テクニックを学ぶことに(中略)
本書で、裁断したトワルを全部縫製し、出来上がりの作品として提示している点もそこにあります。例え立体裁断システムでカットしたとしても、悪いパターンでは決してよい婦人服は作れません。人台にトワルをピンで止めることは安直にできますが、完璧な縫製のできるピン打ちをすることは婦人服の構造原理をマスターした人でなければ安易にできるものではありません。縫えないデザイナーでは完全なデザインはできず、縫えないパタンナーも良質のパターンを作製することはできません。婦人服は女性が着装して生活できるものでなければならず、そこに人体とパターンとの深いつながりが生まれることになります。
この研究書は、服作りの原点に立って解明するところから筆を取りました。当初の考えではパリ・システムの立体裁断テクニックだけを主体としたものにまとめる心算でしたが、毎日研究生に接している中に、女の服を作るのに女体の特徴すら知らない人が多いことに気づいたからでそれを補うためには、それぞれのパートにおける構造原理の説明を入れる必要のあることを感じました。そのために予定よりも長くなり、3年余も時を経てしまいました。
本書を出版するにあたり、長い間沢山の方々の御協力を頂きましたことを心から感謝しております。出版元のモードェモード社の内山基社長をはじめ、大久保昭子さん、永井友子さん、大谷佳津子さん、大文佳津子さん、レイアウトの養父正一氏、カメラマンの安藤公氏、イラストの阿部倉淑子さん、トワル製作を担当した東京立体裁断研究所職員、福永幸子さん、高野優子さん、酒井千賀子さん、そのほか手伝って下さった皆様ほんとうにありがとうございました。
東京立体裁断研究所長 近藤れん子
【序文より】一部紹介
・・・・・・日本婦人のおしゃれがやはり本格的になって来たのでしょうが、その原因の1つとして、世界中の一流ブランドのプレタ・ポルテが日本で安直に入手できる便利な世の中になり、また欲しい服装は殆ど何でもブティックで購入できる程に向上した、日本のアパレル産業界のめざましい発展も同時に指摘しなければならないとおもいます。
このように日本の社会情勢が消費者中心になり、いつでも好きなものが購入できる時代になると、もう一般のお嬢さん達は洋裁技術習得の必要もなくなり、またその興味さえ失うことも当然のことで、洋裁教育界はここで再び大きな曲がり角に直面しました。
洋裁師を志す人々の層が本格的なプロフェッショナル志向の人々に限定されてきたからです。もう花嫁修業程度や趣味で、洋裁を習う人々は殆ど姿を消し、真に服作りのプロとして生きるために道を選ぶ人々によって、職業人としての技が要望される時代になりました。西ヨーロッパやアメリカのようにプロ精神に徹した本もののプロでなければ通用しないほど企業への道は厳しいことを知らされる時が来たからです。
これからの洋裁技術の指導者は、その点にポイントを合わせた実のあるカリキュラムを選択し、求める人々にいかに応えるべきかを真剣に考えなければならないとおもいます。
本書は、着心地よい婦人服を作る場合のいろいろな条件を多角的な面から捕えてみました。婦人のための服なら、女性の体型をまず知らなければなりません。体が動く時には一体どのように対応させるべきかを・・・・・・静止、動作による体型と婦人服との機能性の関連等も忘れてはならない課題の1つでしょう。そして日本の平面製図システムの中で最もなおざりにされて来た立体感覚的な分野に特に焦点をしぼって、視覚で判定する力と感覚養成への訓練等々、本もの志向への服作りに必要な基点から話をすすめたいと願い、写真をできる限り多く入れて、眼で確かめながら学び取るシステムを採用しました。
眼で捕え、心で判断する・・・・・・これが造形のわざを知るための最も近道であり、許されるならば、着て体で着心地を確かめる・・・・・・これこそ着易い婦人服造形のポイントでしょう。
【著者略歴】刊行当時の情報です
1949(S24)東京 成城伊東衣服研究所高等科卒業
1950(S25~28)伊東衣服研究所連盟校 三条カッティングスクールを開校
1954(S29)東京 伊東衣服研究所デザイン科卒業
1955(S30~38)アトリエを開設してクチュール活動を開始
1964(S39~43)パリ留学
1967(S42)ECOLE DE LA CHAMBRE SYNDICALE DE LA COUTURE PARISIENNE卒業
1967(S42)パリ・オートクチュールメゾン・バレンシアガ勤務 PARIS HAUTE COUTURE MAISON BALENCIAGA
1969(S44)相模女子大学家政科講師
1970(S45)東京立体裁断研究所設立
1971(S46)渡仏パリ CENTRE D'ETUDES TECHNIQUE DES INDUSTRIES DE L'HABILLEMENTにてグレーディング科を受講
1972(S47)洋裁用のカーブルーラを考案、実用新案特許をとる
1973(S48)渡仏パリ ESMOD校にプレタ・ポルテシステムを受講
1973(S48)「立体構成の理論と実技」共著(建帛社)
1973(S48)ネック・ゲージ(頸計測器)を考案、実用新案特許をとる
1976(S51)ジャネット(袖うま)を考案、実用新案特許申請中
現在 東京立体裁断研究所所長
現在 相模女子大学家政科講師
現在 伊東グループ理事
現在 日本デザイナークラブ理事
【目次】より一部紹介
●人体と衣服
日本の洋裁教育とその背景
人体と婦人服
人体とドレープ衣服(歴史的見地から)
人体関節機能と婦人服
婦人体型と直線裁ち
婦人服の平面と立体の認識
婦人服とパネル線
婦人服と立体観察
婦人体型とパネル分割
婦人服造形と縫い目線
婦人服のための体型分類
縦断体型
横断体型
各種体型の観察
各種体型とパターン
婦人服のための人体観察
頭の形態
頸と衿ぐりの関係
婦人体型の頸巾計測実験
肩
前肩体型
胸
胴と腹
脇とアームホール巾
背
腰と尻
体型の変化(婦人服とゆとり)
腕運動と体型の変化
動作と体型の変化
性差と体型の変化
年令と体型の変化
中年婦人の体型観察
体型とスローパーコルサージュ
体型とスローパースカート
人体と人台の対比
●立体裁断へのアプローチ
立体裁断について
洋裁の製図原型と立体スローパーの比較
衣服と寸法
人体採寸
立体裁断と人台
個人用人台
人台の補正
人台と基礎線
人台と腕
用具
トワルについて
●立体裁断の基礎知識
トワルの整理
立体裁断の基本的テクニック
デザイン線
ピン打ちの要点
トワルのあて方と観察
ダーツのとり方
伸ばし方と岐づけ法
肩縫い目と脇線
パディング
視覚養成のためのエチュード(ムラージュを作る)
●コルサージュ
ショルダー・ダーツ
サイド・ダーツ
ウエスト・ダーツ
ロー・サイド・ダーツ
サイド・パネル・ダーツ
センター・ダーツ
アームホール・ダーツ
ゴージ・ダーツ
ヨーク
後身頃のダーツとヨーク
コルサージュの欠陥と要因
●衿
衿の構造原理Ⅰ
衿の構造原理Ⅱ
衿の構造原理Ⅲ
衿の種類と名称
立ち衿のグループ(スタンド・カラー)
衿羽付き一枚裁ち衿のグループ(ロールド・カラー)
シャツ・カラーのグループ
ショール・カラーのグループ(へちま衿)
テーラード・カラーのグループ(背広衿)
立体裁断による衿の作り方
衿作りの悪い例
●スカート
スカート丈とファッション
スカートの構造原理Ⅰ
スカートの構造原理Ⅱ
タイト・スカートとダーツ線
スカートの立体裁断――タイト・スカート
セミ・フレア・スカート
フレア・スカート
ギャザー・スカート
パネル・スカート
ゴアード・スカート
プリーツ・スカート
オール・プリーツ・スカート
セミ・フレア・プリーツ・スカート①
セミ・フレア・プリーツ・スカート②
サーキュラー・スカート
●パンタロン
女性体型とパンタロン
パンタロンの構造原理Ⅰ
パンタロンの構造原理Ⅱ
パンタロン人台について
パンタロン人台のスローパーの比較
パンタロンの修正上の要点
パンタロンの立体裁断――大型パンタロン
細型パンタロン
キュロット・スカート①
キュロット・スカート②
キュロット・スカート③
●袖
袖の掘り
袖の振り
袖の肘ぐせ
アームホール
半袖
タイト・スリーブ――横ダーツ
タイト・スリーブ――縦ダーツ
パフ・スリーブ①
パフ・スリーブ②
二枚袖
袖作りの応用――折り紙で作る袖
袖作りの応用――袖型によって作る袖
上腕の発達した腕の袖作り
袖付け――半袖
袖付け――二枚袖
●フルー
立体裁断テクニックに入る前に
アンダーブラウス
オーバーブラウス
シャツウエスト・ドレス
ロー・ウエスト・ドレス
ホルター・ネック・ドレス
サイド・ピース・ドレス
ロング・トルソー・ドレス
ハイ・ウエスト・ドレス
コースレット・ライン・ドレス
ハイ・ネックライン・ドレス
ジャンパー・スカート
●タイユール
テーラード・スーツについて
スーツ――ノッチド・ラベル
スーツ――ピークド・ラベル
スーツ――ショール・カラー
●コート
コートについて
ケープ付きオーバーコート
ルダンゴート
フレア・コート
●直線裁断
直線裁断について
ポンチョ風の上衣
サック・ドレス
アンサンブル――ワンピース
アンサンブル――シャジューブル
一枚裁ちコート